収録:2011年2月27日 広島国際会議場フェニックスホール 第35回定期演奏会 下野竜也音楽監督就任記念演奏会 収録曲: 水を抜けて[2006年版]/平石博一 シリウス/糀場富美子 響宴Ⅰ&Ⅱ/保科洋 ウインドオーケストラのための交響曲/兼田 敏
音楽の友社 2011年度 第49回「レコード・アカデミー賞 特別部門 吹奏楽」を受賞。
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レコード芸術(音楽の友社)2012年1月号 より 特別部門 吹奏楽 ここに「吹奏楽」の未来を聴く |
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■ ディスク紹介 |
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広島ウインドオーケストラ第35回定期演奏会のライブ盤である。広島ウインドオーケストラは1993年に創立されたプロの音楽家による団体であり、2011年に下野竜也を音楽監督に迎え、その就任を記念してこのコンサートが開催された。ミニマル・ミュージックのスタイルで吹奏楽の新しい可能性を追求した平石博一の《水を抜けて》、管楽器の繊細な表現を追求した糀場富美子の《シリウス》、そして、なぜか学校吹奏楽の世界ではあまり取り上げられることがない保科洋の《響宴Ⅰ & Ⅱ》、兼田敏の《ウインドオーケストラのための交響曲》、という内容。演奏水準が最高とは言い難いが、強弱の響きを大切にする下野の音楽作りは素晴らしく、聴き応えのある仕上がりになっている。吹奏楽アルバムの大半が、管弦楽作品の編曲やコンクールを意識した流行の作品で占められているという現状の中、こうしたプログラムで勝負したこと自体、高く評価して良いだろう。 |
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■ 選考経過 受賞ディスク決定まで 中橋愛生 |
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今年度の選考会議には中橋が出席できなかったが、もう1人の選考委員である佐伯茂樹氏とは、会議のちょうど一週間前に別の場所でご一緒できる機会があったため、そこで大筋を話し合い、後日にメールによる詰めの作業を経て、最終的な決定を行った。 最初に互いが持つ寄ったノミネート・ディスクは図らずも同じだった。この3枚は傑出した存在で、他に選択肢は考えられなかった、とも言える。いずれも7月号で紹介されたディスクなのは、単なる偶然である。 ノミネートされたのは3枚だが、そのうちの2枚はどちらもイーストマン・ウィンド・アンサンブルによる1968年のLP録音をCD初復刻し再発売したもの。それに対し、残りの1枚は今年行われた下野竜也の指揮による広島ウィンドオーケストラのコンサートのライブ録音盤である。前者は演奏が極めて優れているが再販であり、後者はそれに比してやや精度を欠く演奏なものの意欲的な新録音・意義のある企画であった。「過去の名演」と「未来へつながる現在」のどちらに賞を贈るかは大いに悩んだが、最終的には中橋の「今後の出版界へのエールにしたい」との意向に佐伯氏が同意してくださり、このような結果となった。 |
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■ 部門賞/選定を終えて |
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中橋愛生 |
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この部門は吹奏楽(管・打楽器)とされている通り、管・打楽器のソロなども扱っている。昨年も似たようなことを書いたが、管楽器ソロのディスクの場合、この部門なのか器楽部門で扱うのかの決定は編集部の裁量で、基準が明確ではない。そのため器楽部門で扱ってもおかしくないもの選出するのはためらわれるのだが、今年度は幸か不幸か、推するに値するディスクは見当たらなかった。 吹奏楽編成では、あまりにも素晴らしい内容(特にマーキュリー盤)の「再販」を推すかどうかを最後まで悩んだが、現在発売されている多くのディスクが「演奏の参考音源」的なものばかりの中で真摯な観賞用の路線を打ち出したものに、将来を託したいと考えた。 |
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佐伯茂樹 |
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昨年は該当なしであったが、今年は広島ウインドオーケストラのCDを推すことで中橋さんと意見が一致した。しかし状況は決して楽観視できるものではない。毎月編集部から送られてくるCDは、これが『レコード芸術』で取り上げられるべきなのか疑われる内容のものが少なくなく、「聴く人のためのものではなく、やる人の音源」という現状は基本的に変わらなかったと言わざるを得ない。ジャンルを問わず、演奏者がやりたい曲を詰め込んだと言う趣が強い管楽器と打楽器のオムニバス・アルバムも同様である。 来年そこは、作曲家の指示通りの楽器で演奏した歴史的定番曲や、国別のスタイルで吹分けたマーチ集などをプロの楽団に期待したい。 |
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■ 受賞アーティストからのメッセージ 下野竜也 |
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この度、このような素晴らしい賞を頂くこととなり、心から感謝申し上げます。吹奏楽は、こんなにも親しまれているのにも関わらず、ある種の先入観により、何となく、他のジャンルとは別物のように扱われていると思います。私たちは、その壁を少しでも取り払い、室内楽の延長線上の吹奏楽を目指すこと掲げ、新たな生挑戦を始めたばかりです。私たちは、まだまだ未熟です。今回の受賞は、皆様から大きなエールを送って頂いたと胸に刻んで、更なる精進を続けていく所存です。本当にありがとうございました。 |